日: 2012年2月9日

ARMがx86を駆逐する日

月面着陸(Moonshot)」という名のプロジェクトがある。hpが開発を進めているARMサーバーのプロジェクトだ。従来型のサーバと比較して消費電力・設置面積・費用を大幅に削減することができるという。

プロセッサーの歴史はこれまでコンシューマーが主導してきた。20年程前。まだWindows 95が世の中に登場していなかった頃は各社がいろいろなプロセッサーを開発し、競争していた。intelのx86だけでなく、MotorolaのPowerPCやDECのAlpha、hpのPA-RISCなどの様々なプロセッサーが存在していたのだ。しかし、その後は御存知の通りintelが独占体制を築くことに成功する。Windows PCが爆発的に普及し、Windows PCには必ずintelが入っていたからだ。いわゆるwintel体制というやつだ。

プロセッサーの開発は巨額の投資がつきまとう。そのため、どれだけ多くの数がさばけるかが勝敗を決める。intelチップはPCという巨大なマーケットに受け入れられたため、その投資を賄うことができた。その技術をXeonというエンタープライズ向けのチップにも転用し、いつしかサーバー用途にもintelチップが多くを占める状況になった。今やNECのメインフレームでさえ”intel inside”なのだ。DECはCompaqに買収されてAlphaとともに潰えた。さらにそのCompaqを買収したhpもPA-RISCの開発を終了。intelと共同開発しているItaniumは先行きが不透明だ。SunのSPARCはOracleに買収されて息絶え絶えの状況である。

もう一つ生き残ったサーバー向けプロセッサーはIBMのPowerだが、実はPowerは任天堂のWiiに搭載されている。だから、生き残ることができているのだ。

この先もintelが市場を独占するのかどうかはわからない。今後はスマホの普及によってARMチップが台頭してくるからだ。昨年2011年は「世界のスマホ出荷台数がPCとタブレットの合計を初めて上回」ったらしい。ARMは設計会社でしかないため、単純にintelと比較することはできないが、今後ARM陣営の開発投資はintelを上回っていくだろう。

intel側も黙ってそれを見ているわけではなく、新しいAtomチップを開発してスマホに売り込もうとしているが、PCほどの利益が見込めるのだろうか。今の開発投資に見合うだけのマーケットを取ることが目標だとしたら、途方もない数をさばく必要がある。まさにイノベーションのジレンマだ。もはやintelにはあまり先がないように思う。

いずれコンシューマー向けプロセッサーとしてARMが普及した時には、おそらくサーバー向けにもARMが適用されていくことだろう。ARMが搭載されたサーバーは、いったいどんな姿なのだろうか。サーバーラックの扉を開ければ、PoEスイッチのRJ45ポートに、あたかもUSBメモリのように刺さっていたりするのだろうか。どんな未来が来るのか楽しみだ。